角膜疾患
角膜クロスリンキング
角膜クロスリンキングとは
角膜クロスリンキングとは円錐角膜・角膜拡張症の進行を抑える方法です。
円錐角膜・角膜拡張症は「角膜移植」唯一の治療とされていましたが、「角膜クロスリンキング」は角膜(実質層)の強度を高め、円錐角膜・角膜拡張症の進行を抑制することが可能です。
角膜クロスリンキング手術の仕組み
角膜実質のコラーゲン組織にリボフラビン点眼液を浸透させ、そこに長波長紫外線を照射するとコラーゲン間の架け橋が出来ます。図のように隣接するコラーゲン線維間にある架け橋(クロスリンキング)を増やすことで角膜実質の強度を高めることが出来ます。
点眼麻酔をした後、角膜中央部の上皮細胞層を円形に剥離する(Epi-Off)と剥離しない(Epi-On)の2種類の方法があります。次いで、リボフラビンを10~20分点眼し角膜に充分に浸透させます。さらにリボフラビンを点眼しながら30mW/㎝2(マイクロ・ワット・パー・平方センチメートル)の紫外線(UVA)を3分間照射します。照射後、リボフラビン液を洗い流し、保護用のソフトコンタクトレンズを乗せて手術は終了です。
■術後定期検査
翌日・3~4日後・1週間後・1ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後・1年後に受けていただきます。
手術時に乗せた「保護用コンタクトレンズ」は術後3日~1週間程度で角膜上皮が修復したのを確認した後に外します。定期検査については主治医の指示に従って下さい。
術後検査では、通常の眼科診察に加えて、角膜形状解析検査、角膜内皮細胞検査、角膜厚検査等で経過をみていきます。
適応疾患
角膜クロスリンキングは下記のような疾患の治療に効果的です。
円錐角膜
角膜実質の脆弱性(弱さ)を特徴とする先天性・進行性の疾患で、思春期から成人早期にかけて中央部から下部の角膜が前方へ突出してくることを特徴とします。角膜が前方に強く突出することにより強度の近視と不正乱視を生じます。
角膜拡張症
医原性の円錐角膜とも呼ばれ、屈折矯正手術(レーシック)で角膜切除を行った後などに生じます。症状は、円錐角膜と類似しており、角膜中央部付近が薄くなり前方へ突出し、裸眼・矯正視力の低下をきたします。
角膜水疱症(角膜内皮不全)
角膜内皮細胞(角膜の最内層の細胞)が、加齢に加え様々な原因で減少し、ある一定の減少率を超えた時、角膜の水分が充分に除去されなくなるため、水分が貯留し、水疱が角膜表面に出現します。この水疱が破裂すると痛みが出ます。当初の異物感は徐々に疼痛に変わりやがて激痛が生じるようになります。
治療のリスク
現時点で報告されている合併症は、重篤なものではありませんが、
・術後感染性、非感染性の角膜浸潤(2~7%)
・角膜混濁 等
があります。
■角膜クロスリンキングの効果が出にくい方もおられます。
角膜クロスリンキングの効果が出にくい方もおられます。
角膜クロスリンキングは着実に実績が重ねられていますが、円錐角膜や角膜拡張などの進行が抑えられても視力が元通りに回復するというわけではありません。
治療効果には個人差があり、視力の回復がみられる方もいれば、進行が抑えられてもそれほど視力の回復しない方もおられます。
また、一時的に見えづらくなることもあります。